新型コロナウィルスに関する報道の中で「陰圧室」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは感染症対策の一環として空気の差圧を利用して、病原体を部屋の外に出さないようにしているのです。
このウィルス対策に一役買っている陰圧室=陰圧ブースとは別に、陽圧ブースというものがあります。この2種類の違いを解説しつつ、陰圧ブースの種類を紹介していきます。
そもそも陽圧ブースと陰圧ブースは両方とも圧力差を利用しています。陽圧は大気圧に対して高い状態を指します。一方で陰圧は大気圧に対して圧力が低い状態です。病院などの医療機関では、この陽圧と陰圧を部屋の目的に合わせて使い分けることで感染症対策を行っています。
室内にホコリやウィルスを侵入させたくない場合は陽圧にします。室内へ空気を送り込むことで室内圧が高くなり、圧力が低い隣の部屋に向かう大気の流れを作り出します。こうすることで室内にホコリやウイルスが侵入する可能性を減らせるのです。
この陽圧システムを採用すれば、室内の清浄度を維持することができます。そのためクリーンブースなどに用いられているシステムです。
陰圧にするときは、室内で発生する汚染物質などを室外に出したくないときです。陽圧にするときは吸気ファンなどを使用して室内に空気を送り込みます。陰圧にする場合はその逆で、排気ファンを使い室内の空気を外へ出し続けます。排気を続けると室内圧が下がるので、隣室から室内に向かう空気の流れが起きるのです。
室内に向かって空気が流れてくるので、隣室へ空気が流れ出すことがなくなります。有害物質やウィルスが流れ出す可能性が減るため、実験室や感染症対策の部屋などで陰圧方式が採用されています。
コロナ禍の現在では、この陰圧ブースの需要が高まっているのです。
陰圧ブースと一口に言っても目的に応じてさまざまな種類があります。病室用、患者隔離用などを紹介します。
現地組み立てタイプと折り畳み式タイプの2種類がラインナップされています。患者のベッドに設置することで、医療従事者を新型コロナウィルスから守るタイプとなっています。
相部屋病棟のベッド周囲に設置することで、一般病室を陰圧室に転換可能です。ブース内を陰圧にすることでウィルスの拡散を阻止します。小型から大型まで広く対応可能で、オーダーメイドにも対応しています。
参照元:伸榮産業公式サイト(https://www.s-shin-ei.co.jp/news/news20200403.html)
患者と医師の空間気流を制御して感染を防止する陰圧ブースです。患者側は陰圧となっており、医師側は陽圧となっています。患者がいるブースではHEPAフィルターでウイルスを捕集し、屋内で排気。医師側はHEPAフィルター給気ユニットでブース内を陽圧にして、外部からの空気の流入を抑えています。
プレハブやテントの中でも使用ができるタイプです。またオーダーメイドによりサイズ変更に応じてくれます。
参照元:伸榮産業公式サイト(https://www.s-shin-ei.co.jp/case/products/a190)
この製品の特徴は組み立てした状態で発送されてくる点です。処置室や診察室に設置可能なコンパクトサイズ(W800 mm×D800 mm× H1,900mm)。HEPAフィルターを通してブース内の空気を排出します。空気清浄機をブース壁面に取り付けたことでブースの小型化を実現。紫外線非透過の素材樽ポリカーボネートとUVビニールカーテンを使用しているのもこの製品の特徴です。
参照元:ユキ技研公式サイト(https://www.yukilabo.co.jp/kit/index.php?UV陰圧検査ブース)
この製品は病院内だけでなく、臨時の医療施設になる診療用隔離装置として設置ができる簡便性が備わっています。部分ごとにモジュール化したことで組み立てを簡易化しています。組み立て所要時間はおよそ4時間としており、解体後も再度組み立てができるのがこのブースの強みです。
またブース内を陰圧にするだけでなく、HEPAフィルターを通した空気を取り込めるようにしています。さらにブース内空気のばく露防止措置もとられています。HEPAフィルターを二重で装着することで厳密な濾過を実施しているのです。
参照元:日立グローバルライフソリューションズ公式サイト(https://www.hitachi-gls.co.jp/products/cpc/negative-cleanbooth/)
感染症患者を対象とした隔離用陰圧ブースです。ブースは折り畳み式となっており、工具を使わずにフレームを広げるだけで容易に設営が可能。隔離用のほかに、外来患者の待合室や病室、汚染物の一時保管など幅広い用途に使用できます。使用しないときはコンパクトに収納できるため、場所も取りません。
参照元:日本エアーテック株式会社(https://www.airtech.co.jp/products/kanseneq/1054/)
アメリカのCDC(疾病管理予防センター)が公表しているガイドラインに準拠した簡易陰圧装置です。CDCガイドラインは厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」にも掲載されており、介護現場での感染症対策の指針として採用されています。ブースの4ヶ所に設置された空気を調整・制御するダンパで、内部圧力を調整することが可能。また、ブースの脚にはキャスターが付いており、スムーズな移動を叶えられます。
参照元:ホーザン株式会社(https://www.hozan.co.jp/corp/g/g8905/)
大学病院のICUや透析センター、帰国者・接触者外来など、医療機関への納入実績が多数ある簡易陰圧ブースです。HEPAフィルターと紫外線ランプのW除菌システムを採用しているほか、接触や揺れに強い構造のアルミフレームを使用。軽量なので簡単に持ち運ぶことができ、組み立てや解体も手軽に行なえる仕様になっています。
参照元:フクダ電子(https://www.fukuda.co.jp/medical/products/etc/fproom.html)
排気HEPAフィルターユニットによって陰圧室対応ブースとして使用でき、病院や介護施設などでの感染症対策に適しています。キャスター付きなのでブースの移動を楽に行えるほか、折り畳んでコンパクトに収納することも可能。設置場所に合わせて、サイズのカスタマイズも行なえます。
参照元:日立ハイテクフィールディング(https://www.hitachi-hightech.com/hfd/product_detail/?pn=med-booth-unit)
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新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、クラスターの発生や感染拡大を防止する観点から、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設などの高齢者が入所する施設に対し、簡易陰圧装置の導入補助制度が実施されています。利用できる補助金については以下の通りです。
簡易陰圧装置を設置する際や簡易陰圧装置の設置とともに簡易的なダクト工事などを行う場合、導入費用に助成金が支給されます。
補助対象となるのは簡易陰圧装置を設置するために必要な備品購入費、工事費又は工事請負費、工事事務費で、補助基準額は簡易陰圧装置1台につき4,320,000円です。
ただし、簡易陰圧装置は居室・静養室・医務室に設置したものに限られるほか、工事事務費は工事費または工事請負費の2.6%を限度とすると定められています。
共同生活室の入口への玄関室、消毒や防護服の着脱を行うためのスペースなど、ゾーニング(区分け)経費、感染者と非感染者の動線を分離することを目的とした従来型個室・多床室を改修する費用、感染症の感染拡大を防止しつつ家族との面会を実施するための面会室の整備費用などにも助成金が支給されます。
陰圧ブースの耐用年数は6年とされており、導入から耐用年数が経過するまでは補助事業の目的のもとに使用することが定められています。
目的に反した使用や譲渡、交換、廃棄することはできません。
伸榮産業
日本エアーテック
・医薬品製造工場の実績が豊富
・医薬品製造工場が多数ある中国・シンガポール・韓国・インドなど8つの海外拠点を持つ
アズワン(AXLE)